聖書の人物

(2)エバ(創世記より)

『女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。』(創世記3・6〜7)

有名なエデンの園のアダムとエバの物語。蛇に誘われたエバが禁断の木の実をとって食べるシーンである。園にある木はすべて、「見て美しく、食べるに良いもの」であった。だが園の中央にある「善悪の知識の木」の実は、取って食べてはならないと神から言われていた(創世記2・17)。禁止されてはいるがそれを取って食べる自由が人間には与えられている。本能のままにしか生きられない動物とちがい、人間は神のいましめを聞くことができ、それに従う自由と共に、そむく自由も持っている。神にそむくこの自由は、人間が神のようになる可能性として、「おいしそうで、目を引き付け、賢くなるよう」非常に魅惑的に思われた。エバは女としてその魅力に抗しきれず、手を伸ばして禁断の木の実を取って食べる。「盗んだ水は甘く、隠れて食べるパンはうまいものだ」(箴言7・17)。彼女はそれを夫アダムに与え、彼も食べた。

ここに示されているのは、人の始祖が犯したとされる原罪である。こうしてふたりの目が開け、自分たちの裸を恥じていちじくの葉で腰をおおったこと、また神の足音を聞いて園の木の茂みに身を隠したことは、人間が神に対し、もはや正面切って、出会うことができない負い目のある者となっていることを物語る。そしてそれは、創造の神話におけるエデンの園のアダムとエバに描き出された、現代の私たちひとりびとりの姿でもある。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、ウィーン美術館にあるグースの『原罪』という絵。中央がエバで左がアダム。罰せられる以前の蛇の姿に注目いただきたい。

【聖書の人物】過去のデータ
(1)アダム

熊本聖三一教会