- 『ヤコブは言った。「まず、お兄さんの長子の権利を譲ってください。」「ああ、もう死にそうだ。長子の権利などどうでもよい」とエサウが答えると、ヤコブは言った。「では、今すぐ誓ってください。」エサウは誓い、長子の権利をヤコブに譲ってしまった。』(創世記25・31〜33)
- イサクは愛妻リベカとの間に双子を生んだが、兄のエサウは野人的な性格で狩りを好み、一方ヤコブは穏やかでいつも家の中に住んでいた。ある日、エサウが狩りから空腹をかかえて家に帰ったとき、ちょうどヤコブは台所であつものを煮ていた。それをすぐ食べさせてくれと頼む兄に、ヤコブは、この料理と引きかえに長子の特権を自分に売れと言う。長子の特権とは、親の財産をもらいうけるという物質的な意味より、先祖代々にわたって与えられる神の祝福を、責任をもって父親から受けつぐという重要な意味を持っていた。そのときエサウは、「ああ、もう死にそうだ。長子の権利などどうでもよい」と言って、ヤコブの作った料理をわしづかみにして平らげ、満腹すると再び外に出て行ってしまった。
- 人間は肉体的な要求にせまられるとき、よほどおちついて考えないと、目前のことに目がくらみ、一生とり返しのつかない大失敗をすることがある。エサウはその典型であった。こうして、アブラハム、イサク、と続くイスラエル族長の家系は、エサウでなく弟のヤコブが受けつぐことになった。『だれであれ、ただ一杯の食物のために長子の権利を譲り渡したエサウのように、みだらな者や俗悪な者とならないよう気をつけるべきです。』(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)
- この絵は、テリエンの聖書物語に描かれた、その時の場面です。
|