- 『ナオミは言った。「どうか、ナオミ(快い)などと呼ばないで、マラ(苦い)と呼んでください。全能者がわたしをひどい目に遭わせたのです。出て行くときは、満たされていたわたしを主はうつろにして帰らせたのです。なぜ、快い(ナオミ)などと呼ぶのですか。主がわたしを悩ませ全能者がわたしを不幸に落とされたのに。」』(ルツ記1・20〜21)
- 士師たちが国をおさめていたころ、ききんを逃れてモアブの地に移住したある一家に、つぎつぎに不幸がおそった。主人は死に、二人の息子たちも結婚後相ついで世を去り、後には、やもめとなった老母ナオミにモアブで迎えた息子たちの若嫁たちという、女三人が残された。涙にくれるナオミは、ひとり郷里のベツレヘムに帰ろうと決心し、若嫁たちを説いて実家に帰らせようとする。しかしそのうちの一人ルツは、「あなたを捨て、あなたを離れて帰ることをわたしにすすめないで下さい。わたしはあなたの行かれる所へ行き、またあなたの宿られる所に宿ります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神です」と言って、ナオミに同行した。このけなげな嫁を伴い、ナオミは郷里について人々に迎えられたが、彼女の心は悲しみに打ちひしがれていた。その人生にはもう何の楽しみも望みもないと思われたからである。
- だがルツは、孤独をかこつやもめナオミのもとにまごころをこめてとどまり、彼女に仕え、彼女を慰めた。やがてルツはナオミの親族のひとりと結婚するが、彼女の孫エッサイからイスラエル王となるダビデが生まれることになる。こうして、やもめナオミと彼女に従った貞女ルツの物語は、ダビデの子孫イエス登場のうるわしい背景となった。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)
- この絵は、テリエンの聖書物語に描かれた、ルツが落穂を拾っている場面です。
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