聖書の人物

(21)サムエル(サムエル記上より)

『一方、少年サムエルはすくすくと育ち、主にも人々にも喜ばれる者となった。』(サムエル記上2・26)

サムエルは、士師時代から王国時代への移行期に現われたイスラエルのすぐれた指導者である。彼はイスラエル初代の王となった青年サウルを選び出し、王国建設の基礎を築いた。サムエルに関して興味ぶかいのは、その生前および幼児期の物語である。

彼の母ハンナは石女(うまずめ)であったが、主に祈って、与えられる男の子を生涯主にささげることを誓い、ういごサムエルを得た。サムエルは主の宮に住み、祭司エリのもとで成長し、「主にも人々にも喜ばれる者となった」が、ある夜、彼は「サムエルよ、サムエルよ」という呼びかけを聞いた。彼はそれをエリの声と思い、彼のもとに走って行く。しかしエリは、「わたしは呼ばない。帰って寝なさい」と言う。そういうことが三度続いて、エリは主がサムエルを呼んでおられるのだと知った。エリの言葉に従い、主の呼びかけに対して「主よお話しください。僕は聞いております」と答えた幼児サムエル。彼はやがて大預言者となるが、このような彼の幼児物語は、「われ汝を腹につくらざりし先に汝を知り、汝が胎をいでざりし先に汝をきよめ、汝をたてて万国の預言者とせり」(エレミヤ書1・5)という主の言葉を聞いた預言者エレミヤ先駆でもあり、また新約聖書における、石女の母エリサベツから生まれたバプテスマのヨハネの物語、さらにイエスの誕生やその幼児期の物語とも内容的に似通っている。ルカ福音書の「幼な子〔ヨハネ〕は成長し、その霊も強くなり、(ルカ1・80)幼な子〔イエス〕は、ますます成長して強くなり、知恵に満ち、そして神の恵みがその上にあった」(同2・40)、「イエスはますます知恵が加わり、背たけも伸び、そして神と人から愛された。(同2・52)などを読むと、明らかにこの著者はこの著者ルカは、サムエル物語を下じきにしてヨハネややイエスの誕生物語をしたじきにしてヨハネやイエスの物語を書いていると思われる。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、テリエンの聖書物語に描かれた、主の呼びかけに答えるサムエルと後ろで寝ているエリ先生の場面です。

【聖書の人物】過去のデータ
(1)アダム
(2)エバ
(3)カインとアベル
(4)ノア
(5)アブラハム
(6)サラ
(7)ロトの妻
(8)イサクとリベカ
(9)エサウとヤコブ
(10)ヤコブとラケル
(11)ヨセフとその兄たち
(12)ファラオの娘
(13)モーセ
(14)アロン
(15)バラム
(16)ラハブ
(17)ヨシュア
(18)デボラ
(19)サムソンとデリラ
(20)ナオミとルツ

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