聖書の人物

(49)ペトロ(マルコ福音書より)

『イエスは、ガリラヤ湖のほとりを歩いておられたとき、シモンとシモンの兄弟アンデレが湖で網を打っているのを御覧になった。彼らは漁師だった。イエスは、「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしよう」と言われた。二人はすぐに網を捨てて従った。』(マルコ1・16〜18)

イエスの代表的な弟子のひとりシモン・ペトロは、ガリラヤ湖北岸ベトサイダに住む若い漁師であったが、彼には妻や同居家族がおり、幼い子どもがいたと考えられる(マルコ1・30、9・36)。イエスはガリラヤ伝道の初期、ペトロの家を活動の拠点にしたようである。おそらくペトロはバプテスマのヨハネのことを知っていただろうし、日常の漁業のかたわら、イエスの説教をしばしば聞き、強い影響を受けていたと思われる。しかし自分から進んでイエスの弟子となり、すべてを捨てて彼に従うという決意まではもっていなかった。

ある日、イエスは彼に近づき「わたしについてきなさい」と単刀直入に呼びかけた。この言葉には不可抗的な権威があった。ペトロははじかれたようにただちに網を捨て、弟のアンデレと共にイエスに従ったのである。ペトロもアンデレも、またその後イエスに呼ばれて仲間に加わったヤコブやヨハネも、世界史のこの時点においては卓越せる秀才や有能な男たちではなかった。彼らはあまりにも平凡な、貧しいガリラヤ湖畔の漁師にすぎなかった。ただ、イエスの呼びかけを聞いて彼に従い、彼と行動を共にする人間とされたことによって、彼らは――イエスの「弟子」、またイエスの「証人」として――人類の歴史上きわめて特別な意味をもつ人々となった。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、ジョヴァン・フランチェスコ・バルビエリ作「婦人をよみがえらせる聖ペトロ」です。婦人というのは、使徒言行録9章のタビタのことでしょうか。フィレンツェのピッティ美術館にあります。

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