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聖書の人物
(55)ヘロディア(マルコ福音書より)
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- 『ヘロデが、自分の誕生日の祝いに高官や将校、ガリラヤの有力者などを招いて宴会を催すと、ヘロディアの娘が入って来て踊りをおどり、ヘロデとその客を喜ばせた。そこで、王は少女に、「欲しいものがあれば何でも言いなさい。お前にやろう」と言い、更に、「お前が願うなら、この国の半分でもやろう」と固く誓ったのである。少女が座を外して、母親に、「何を願いましょうか」と言うと、母親は、「洗礼者ヨハネの首を」と言った。早速、少女は大急ぎで王のところに行き、「今すぐに洗礼者ヨハネの首を盆に載せて、いただきとうございます」と願った。王は非常に心を痛めたが、誓ったことではあるし、また客の手前、少女の願いを退けたくなかった。そこで、王は衛兵を遣わし、ヨハネの首を持って来るようにと命じた。衛兵は出て行き、牢の中でヨハネの首をはね、盆に載せて持って来て少女に渡し、少女はそれを母親に渡した。』(マルコ6・21〜28)
- ヘロディアは前出のヘロデ・アンテパスの後妻である。彼女にはサロメという連れ子の娘がいたが、この固有名詞は1世紀のユダヤ人史家ヨセフスの著作に記録されており、福音書ではしるされていない。だが、マルコ福音書6・21以下が伝える物語においては、ヘロデヤとその娘サロメとが非常に陰惨な主役を演じている。ヘロデ・アンテパスは高位高官の人々の面前でこのふたりの女の手玉にとられており、大いに困惑しつつもせい一杯の虚勢を張って、バプテスマのヨハネの首をはねるよう衛兵たちに命令した。こうして世紀の預言者ヨハネは、王の宴席のつまみのような形で非業の死をとげた。オスカー・ワイルドはこの物語に取材して有名な「サロメ」を書いた(1893年)。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)
- この絵は、テリエンの『聖書物語』(創元社)に出てきた挿絵です。左がヘロディアで右がサロメ。
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