聖書の人物

(66)

金持ちの青年(マルコ福音書より)

『イエスが旅に出ようとされると、ある人が走り寄って、ひざまずいて尋ねた。「善い先生、永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか。」』(マルコ10・17)

このような質問をイエスにしたのは、マタイではひとりの青年となっており(マタイ19・22)、ルカでは役人であった(ルカ18・18)。三つの福音書に共通しているのは、彼が「金持ち」であったことである。そこから、これは「富める青年」の物語としてひろく知られている。

地位や境遇にたいへん恵まれている若者が、何をすれば永遠のいのち(神に祝福された生活)が得られるかとイエスに問うたとき、イエスは、「持っているものをみな売り払って、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」と答えた。「すると、彼はこの言葉を聞いて、顔をくもらせ、悲しみながら立ち去った。たくさんの資産を持っていたからである」(10・21以下)

断片的な形で残存しているヘブル人への福音書(2世紀の外典)では、次のようになっている。

・・・・「先生、私はどういうよいことができ、そして生きられますか」。彼[イエス]は言った。「律法と預言者[の語ること]を成就しなさい」。彼は答えた、「私はそうしております」。イエスは言った、「行って、あなたの持ち物を全部売り払い、貧しい人々に施しなさい。そして来て、私に従え」。しかしその金持ちは自分の頭をかき始めた。それは彼を喜ばせなかったからである。すると主は彼に言った、「律法には【あなたの隣り人をあなた自身のように愛せよ】と書いてあるのに、どうしてあなたは、律法と預言者を成就していると言えるか。見よ、多くのあなたの兄弟たち、アブラハムの子らは、ぼろをまとい、飢えて死んでいる。そしてあなたの家は良いものに満ちているが、何ひとつ彼らの方へは出て行かないではないか」と。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この絵は、「イエスと出会う ― 福音書を読む」オリエンス宗教研究所/教文館という本の中にある挿絵です。

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熊本聖三一教会