聖書の人物

(76)

 アリマタヤのヨセフ(マタイ福音書より)

『夕方になると、アリマタヤ出身の金持ちでヨセフという人が来た。この人もイエスの弟子であった。この人がピラトのところに行って、イエスの遺体を渡してくれるようにと願い出た。そこでピラトは、渡すようにと命じた。』(マタイ27・57〜58)

エルサレムの西北アリマタヤの村の出身でヨセフという金持がいた。ルカによると「善良で正しい人」であり、最高法院の議員でもあったが、「議会の議決や行動には賛成しなかった」とある(23・50以下)。彼は老教師ニコデモのように、ひそかにイエスを尊敬していた人であったらしい。

イエスの死後、彼は総督ピラトに申し出て、イエスの死体を引きとることの許可を得た。ヨセフはきれいな亜麻布を買い求め、それでイエスの死体を包み、岩を掘って造った自分の新しい墓に納めた。イエスが処刑された日は金曜日であったので、この行為は夕暮れに大急ぎでなさねばならなかった。ユダヤ教の聖日(安息日)は土曜日であり、しかもユダヤでは新しい日は日没とともに始まるからである(死体を放置しておくことは聖日けがすものと考えられていた)。

アリマタヤのヨセフのしたことは、彼としてできるかぎりのイエスに対する敬虔な奉仕であった。社会的地位があり金持であった男性の彼には、生前のイエスの運動にすべてを捨てて馳せ参じることは、到底できないことであったらしい。むろん彼は、「預言者の墓を建て、義人の碑を飾り立てて」過去の人々を礼賛しながら、平気で同時代の預言者を殺すような、偽善な学者、宗教家のたぐいには属していなかった(マタイ23・29以下参照)。といって彼は、イエスの福音の生きた証人にもなりえなかった。彼の所在は、イエスの死と復活の小さなはざまに安置される。イエスの死体のお世話、その死に至るまでの運動ともその死以後の運動とも深くは関わらない、静かな敬虔の行為 ― このアリマタヤのヨセフの姿は、富や社会的地位に恵まれた世々のキリスト教のエリートたちのそれに似ている。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

この写真は、プロテスタント教会が、イエス様の葬られたアリマタヤのヨセフの墓であると、主張している「園の墓」です。

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