聖書の人物

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 アポロ(使徒言行録より)

『さて、アレクサンドリア生まれのユダヤ人で、聖書に詳しいアポロという雄弁家が、エフェソに来た。彼は主の道を受け入れており、イエスのことについて熱心に語り、正確に教えていたが、ヨハネの洗礼しか知らなかった。』(使徒言18・24〜25)

コリントにおける伝道において、「わたしは植え、アポロは水をそそいだ」(コリント第一・3・6)とパウロに語らしめていることで有名な、アポロというアレキサンドリア出身のユダヤ人伝道者は、旧約聖書の学びが深く、きわめて雄弁な人であった。だが彼は、バプテスマのヨハネの教えについて知っていただけで、イエスの福音に関する知識を欠いていた。

アポロがエフェソにきたとき、アポロの優秀を深く認めながら、"なおひとつを欠く"と思われる彼の盲点、つまりイエスについての認識不足を、愛をもって満たしたのは、当時そこにいたブリスキラとアキラであった。また、この敬度な信徒夫妻は、アポロをコリソトヘ送るにさいし、彼を教会の人々が歓迎するようにと手紙を書き送っている。

パウロやアポロのようなすぐれた伝道者は、決して自分だけの資質や能力で大きな仕事ができたのではない。彼らを見出し、育て、見守る多くの信徒たち、特に愛情ぶかい女性たちの祈りによってこそ、彼らは働くことができた。初代教会の伝道の進展は、伝道者と信徒とが一体になってくりひろげられた成果であり、特定の大伝道者の個人的偉業などではなかった。(佐伯晴郎著「聖書の人々」より)

写真は、コリントのレカイオン通りと、南にある山アクロコリントです。
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